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KJ WORKSの設計術や家づくりについて私の想いを、日々綴っています。
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2008年10月アーカイブ

雨の日の見学

 


22日から二日間、東京でOMソーラー協会の「ひと・すまい・くらしラボ」という研究会に参加してきました。木の家、そしてOMソーラーの家をつくっている我々をめぐる様々な課題についての研究発表と討議で、もう頭が満腹という感じでしたが、今後のKJワークスの家づくりに活かせることも色々と仕込んできました!

二日目は午前中で会議は終了、午後からは事例見学があったのですが、それでもまだ時間が余ります。そこで、あいにくの雨だったのですが、以前から一度行ってみたかった、世田谷は成城にある「旧猪股邸」を見に行くことにしました。

旧猪股邸は、建築家・吉田五十八の設計による数寄屋造りの建物で、現在は財団法人「世田谷トラストまちづくり」の管理運営によって一般公開されています。吉田五十八といえば、近代数寄屋建築の巨匠です。「吉田流」と言われる、昔からの慣習にとらわれない自由な発想のすっきりとした和風建築を得意とした建築家なんですね。私は古民家も好きですが、「吉田流」の建物はKJワークスが得意とする「すっきりとした木の家」に通ずるところがあって大好きですし、非常に参考になると思っています。

今回は雨であまり良い写真は撮れませんでしたが、建物は思ったとおりの素晴らしいものでした。昭和42年竣工といいますから、私と同い年です。五十八晩年の作ですね。敷地564坪、建物(平屋)115坪、お茶室が2つもある大きな建物でした。一見普通の和風建築のようですが、あちこちに「吉田流」が垣間見え、そのデザインにはうならされます。また水澤工務店による施工のなんと美しいこと!難しいデザインを見事に形にするその技術には惚れ惚れしてしまいました。

サムネイルの左から一枚目、食堂から広々とした居間、そして建具を開け放った庭を見ています。居間はとても天井が高く、どちらかというと来客のサロンのような使われ方だったとか。

二枚目は、和室から畳敷きの縁側、そしてお庭。三枚目は、後に増築された書斎からの眺めです。和室も天井が高い!でも変な感じがしないあたりが、吉田デザインなのでしょうね。

四枚目、居間から庭に降りると、このような深い軒下空間になっています。木製の建具を守るという技術的な意味もあるでしょうが、この屋内と屋外の間のような独特の雰囲気がとてもいいんですね。

ゆっくりと中を歩きまわり、最後に居間の窓際に座って閉館時間までしばらくぼけっとお庭を眺めていました。他の見学者もおらず、しとしと雨の音だけが聞こえています。軒下の雰囲気とお庭の眺めで、気持ちがとても落ち着いてきて、勉強勉強で熱くなった頭もすっかりクールダウンできました。写真撮影にはよくないけど、今回は雨の日に来たことがとても良かったようです。

さて、またひとつ素晴らしい建物からパワーをもらいました。ラボで勉強したような現状の課題克服ももちろん大事ですが、このような先人による建築という財産をKJワークスの家づくりに活かすことも、同様に大切です。どちらにも偏りすぎず、バランスをとりながら進んでいくべきだと改めて感じた次第です。

屋根いろいろ

 






先日、南大阪で施工中の「木想家」の社内検査に行ってきました。現場が位置する街並は、昔ながらの雰囲気がそこここに残る感じで、民家フェチの私としては行くのが楽しみな場所であります。今日はそんな写真を並べてみました。

一枚目、なんとも重厚な屋根の連なりですね。幾重にも重なる「甍の波」に感激しきりです。民家の美しさとは、やはりこの大きな屋根と重心の低さによるところが大きいですね。しかし反面、内部空間の低さ、暗さという問題もあるために、住まい手から嫌がられて取り壊される建物も多いようです。KJワークスなら、その辺りをうまく解決できる改修案も提案できるのになあ、と思いつつ屋根を眺めるのでした。

二枚目、こちらはとてもユーモラスな、上部に櫓のようなものが載った建物です。一枚目の写真にも屋根の天辺に小さな越屋根がありますが、これは古い民家にはよくある、煙抜きですね。この下に竃があるわけです。でも、この建物の越屋根というか櫓は、どう考えてもそれではありません。物見櫓かな?そんなことを想像しながら建物を見るのも、また楽しいものです。

三枚目、これは元銭湯だった建物だと、施主さんから聞きました。この屋根で素晴らしく美しいのが、一番前面にある塀の上に載った可愛らしい瓦屋根、その端部です。瓦屋根の軒でないほうの左右の端部を「けらば」と言いまして、普通はここの瓦の下には「破風板」という木の部材がくるのです。KJワークスの建物にも破風板はありますが、この建物の小屋根では、なんと破風までが瓦で出来ているんですね!端っこが反り返ったような意匠のこの「破風瓦」はなんとも美しくて、私ははずしてもって帰りたい衝動に駆られて、しばらくそこで動けなくなってしまったのでした...。

もう使われていない建物もありますが、せっかくここまで「古美る(ふるびる)」ことができているのに、もったいなく思われてなりません。この味をそのままに建物を蘇らせ、住まいとしての価値を向上させる「リノベーション」とは、このような建物にこそ施してやりたいと、私は思うのです。

木の表情

 


今日は、じっくりとプランを練るため、自宅で作業をしているんです。

いつもダイニングテーブルにパソコンを置いて作業をするのですが、今朝もそのために朝食後のテーブルを拭いていて、その栃(とち)の板が朝日に輝いてあまりに美しいので、思わず携帯のカメラでシャッターを切りました。

このような、柾目とか板目という木目とは違った木の表情を、杢(もく)といいます。このように繊維方向の木目とは直行して現れるものを「縮み杢」というそうで、栃の木はその代表的なものですね。何というか、水面の波が光に輝くような美しさです。パソコンをセットするのも忘れて、しばらく見とれてしまいました。毎日そこで食事しているといっても、普段はそのようにじっくりと眺める余裕がありませんもので...。

栃のテーブルの向こうには、椅子が二脚見えますね。手前が長女のもので、最近購入した柏木工さんの「シビルチェア」です。それまではもうひとつの方のような子供用の座面調整ができる椅子を長らく使っていたのですが、もうそろそろちゃんとした、できれば一生使えるようないいものを!ということで、本人が選んだ椅子です。素材はナラ。

奥は息子の椅子ですね。合板でできた背の部分がずいぶん痛んできています。彼も長女の椅子購入に触発されて新しい椅子をせがむのですが、さすがにまだ身長が足りないので、まだしばらく我慢です。この椅子も脚の部分は無垢材ですね。素材はブナ。

ちなみに、椅子の後ろの造付収納の表面は突板(つきいた:木を薄くスライスしたもの)ですが、素材はシオジです。杉の柱や窓台、そして栂(ツガ)の床材も少し写っています。そしてコーヒーカップの下には、旭川でもらった樺(カバ)のコースター。

テーブルの表情を、と思って何の気なしに撮ったこの一枚の中にも、7種類の木がそれぞれのいい表情を見せてくれているんですね。改めて感心して廻りを見回すと、他にも松や栗や鬼胡桃(オニグルミ)など色々な木の表情が見えています。じっくり見るとそれぞれに個性がありながら、全体としてはとても調和している。それはやはり、木という素材そのものがもつ色だからなのでしょうね。見ていてとても落ち着きます。

家でプランを考えているときのほうがリラックスできて、いい案が浮かぶことが多いのは、ひとつにはそんな理由もあるのかなあと改めて思えた、今日の朝だったのでした。

次は私達夫婦の椅子を家に合った無垢のものに買い換える番です!どんなのにしようかなあ?

なお杢に興味がおありの方は、こんなページもありました。http://www.sennennomoku.com/moku1.html

城をつくる

 


『火天の城』 山本兼一著 文春文庫

久しぶりに小説を読みました。
弊社HPの社員紹介にも書いたのですが、完全リサイクル社会であったという「江戸時代」というものにとても興味があり、その手の時代考証的書籍は色々と読んでいます。そこから足を伸ばしてそろそろ「歴史小説」という大海に乗り出そうかという気持ちもありつつ、他のジャンルで読みたいものも多々あってなかなか踏み出せないでいたところに、この本と出会ったんです。

織田信長による安土城の築城を、その大工棟梁を中心として描いた物語なんですね、これは。

きっかけはWEB上のニュースだったのです。<松本清張賞受賞作『火天の城』映画化!>というもので、西田敏行氏主演であることと共に原作の概要が書かれていました。脳の読書中枢(?)にビビッときて、すぐさま文庫本を購入!です。なんといっても、同じくものづくりを生業にするものとして、「城をつくる」ということそのものに非常に興味があるし、それをメインテーマにした小説などは聞いたことがありませんでした。また織田信長という人物についても、今まで色んな描かれかたをしていたと思いますが、城をつくる棟梁側から信長を描くという切り口にも興味をそそられましたね。

読み始めると、予想通りぐいぐいと惹きこまれてしまって、むさぼるように一気に読了してしまいました。

元は熱田神宮の宮大工であった岡部又右衛門を物語の中心に、桶狭間の合戦での信長との出会いから、棟梁への抜擢、信長の権勢の象徴とも言える安土城の築城をめぐる波乱万丈のドラマと様々な人間模様、そして本能寺での信長の最後と城の終わりまでが、ディテールを固めた確かな筆致で描かれています。

何といっても、安土城というそれまでになかった巨大な城郭を建築するということ、その壮大さ、そして尋常でないその困難が恐ろしいほどに伝わってきます。石垣に使う巨石の運搬しかり、大通し柱に用いる巨木の調達しかり、その全てが人力で、時には多大な人命を犠牲にして進められていくさまは、まさに壮絶としか言いようがありません。幾度も本をもつ手が固まるような感覚を味わいました。

そして建設のシーンでは様々な専門用語やディテールの表現が頻出しますが、商売柄その内容がとてもよく理解でき、頭の中に3Dで浮かんでくるというこの至福!これは非常に得したという感じでしたが、逆に言えばそれだけの筆力、力量がある作者ということですね。

もちろんそういった部分を抜きにしても人間ドラマとして非常に魅力的だったし、岡部棟梁による「木を組むのが大工なら、人を組むのが棟梁」といった名台詞もあったりして、このジャンルに興味のある方なら誰でも楽しめる一冊だと思います。

これは映画のほうも楽しみだぞ!いつ映画化されるのかな、と思ってWEBで調べていたら、いつのまにか映画の公式サイトまで出来ていました。(http://katen.jp/)キャストの項を見ると、原作にない役柄もあったりしますね。ストーリーが若干違うのかも?まあ、映画と原作を共に楽しめればいいわけなんですが。

映画は2009年秋に公開だそうです。興味がおありの方は、それまでに是非原作をご賞味あれ!




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