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KJ WORKSの設計術や家づくりについて私の想いを、日々綴っています。
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2011年11月アーカイブ

水を吸いだす

 

水を汲み出す

 

ご愛読、ありがとうございます。

 

皆さんは、「ジェームズ ダイソン アワード」という賞をご存知でしょうか?あの掃除機のダイソン社が主催するもので、テーマは常に「日常の問題を解決するアイデア」というもの。創造的で、より必要とされる製品を審査し、賞金を出しているんです。

 

今年の同アワードの最優秀賞を受賞したのが、上の写真の製品。名前を「Airdrop」と言うそうです。これは、砂漠などの乾燥地帯で、水を生み出す装置なんです。

 

では、どのような方法で水を生み出すか。そのシンプルで持続可能な仕組みが受賞の理由だと思いますが、なんとこの機械は、空気から水分を「吸いだす」のです。

 

Airdropの地上に出ているポール状の部分、一番てっぺんは太陽電池です。そしてその下の膨らんで見える部分が、風車です。ここが風で回転すると、空気がポールの中へ引きこまれます。

 

そしてその空気は、地下に埋設された螺旋状のパイプの中を動いていきます。地面の下の温度は深くなればなるほど安定していて、乾燥地帯では空気中の温度よりもずいぶん低いのですね。そして引きこまれた空気は冷やされて、結露が生じます。温度が低くなれば、その空気中に含むことができる水蒸気の量は減ります。空気中にいられなくなった水蒸気が、水となって出てくるわけですね。

 

その水が、螺旋状のパイプの中を伝わり、最下部のタンクに溜まります。少しずつ、少しずつ結露水が増えていき、水が溜まったらそれを、ポンプを使って周囲の植物の根に給水する、という仕組みなんです。てっぺんの太陽電池は、そのポンプのための電源だったというわけです。

 

説明すれば何という事もないのですが、これを発想し、そして実験を重ねて製品として創り上げたというのは、本当に大変なことですよね。素晴らしい発明だと思います。

 

受賞者エドワード・リナカ氏に対して、主催者であるジェームズダイソン氏はこうコメントしています。

「Airdropは、水分の結露といったシンプルな自然原理を適用し、優れた効果を生み出すひとつの方法を示している。」 と。

 

まさにそうだと思いますが、面白いのは、リナカ氏がこの機会を、ある虫をヒントに開発された、というエピソード。

 

砂漠地帯に生息する甲虫、「ナミブビートル」は、年間降水量1.5センチという地域で、自分で水を作って暮らしているのだそうです。結露の原理を利用して、早朝に自分の背中の皮膚に水をつくり出し、その露を飲んで生きているのだとか。いや、生命の力というのは、すごいですね。

 

砂漠で虫が生きる力を元に生み出されたこの機械、砂漠を緑に変える力を秘めていそうです。アワードの賞金で開発に弾みがつき、早期実現が成ることを期待してしまいますね。



三つの世界

 

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ご愛読、ありがとうございます。

 

今日はまた、私が好きな絵をご紹介しましょう。エッシャーの『三つの世界』です。

 

マウリッツ・コルネリス・エッシャー(Maurits Cornelis Escher 1898年6月17日 - 1972年3月27日)は、オランダの版画家です。皆さんもきっと一度はご覧になったことがあると思います。あの、現実には存在しえない構造物を描いた絵を。

 

images こんなやつです。

 

エッシャーの版画は、非常に緻密な画面でその独特の世界を表現しています。そのテーマはいくつかあって、大体以下のように分類されるようです。

 

1.平面の正則分割
2.鏡面の表現
3.遠近法の操作
4.不可能な図形
5.多面体の表現

 

上の『物見の塔』は不可能な図形を表現したもので、日本ではこういう絵を「だまし絵」と呼んだりしますね。

 

私はどのテーマの作品もとても好きで、その偏執狂的とも言えるほどのディテールへのこだわり、緻密な表現にいつも感嘆しているのですが、この『三つの世界』は、他の作品群とは雰囲気が少し違っていると感じるんです。

 

テーマとしては「鏡面の表現」の発展形とも言える作品ですが、とても静謐で深みのあるものに仕上がっていると思います。この絵に描かれているものは、水面。ただそれだけなのですが、そこには確かに三つの違った世界が表現されていますね。

 

ひとつは、もちろん水面自体、その面の世界。落ち葉が浮かんでいます。それによって「物質」が表現されているのでしょう。

 

二つめは、水面に映った樹木。これは映り込んだ地上の世界。水面への「反射」の表現ですね。

 

そして三つめは、魚がいる水面下の世界。これは「透過」の表現だと言えるでしょう。

 

ただ一枚の絵、ただ水面が描かれているだけの絵ですし、このような光景は日常的に我々が見ているものだと思います。しかし、それがもつ意味合いをこのような表現で私たちの前にあぶりだしてみせる。その観察眼からの発想と、その技量の素晴らしさ。

 

この絵は、その静謐な雰囲気が故に、何だかとても深遠な世界、なにか大切な真理を表しているのでは、とすら私には思えてきます。また、何だかとても日本的だなあ、という気もします。

 

エッシャーの作品には、特に晩年にはそのような「真理の表現」というような感じが表れてきます。それは彼自身の世界観、それそのものなのでしょうね。

 

 

※実は、エッシャー自身が自作を語った書籍があります。朝日選書にあるのですが、そのタイトルがまさに彼の作品を一言で表したものです。『無限を求めて』という本です。



カニ樹脂

 

カニ樹脂03

 

ご愛読、ありがとうございます。

 

ご覧の写真、右側の透明な甲羅は左の甲羅を使ってつくられたもので、同じ大きさです。でも、型をとって作った複製、というわけではありません。それよりももっと、カニの殻の成分をうまく使った画期的な技術の成果なんですね。

 

カニやエビの殻というのは、キチンという直径5万分の1ミリほどの極細の繊維による構造がその芯であり、その周囲をたんぱく質などが覆ってできているのです。このたび京大生存圏研究所では、このカニの殻の繊維構造を活かすため、酸とアルカリを使って殻からたんぱく質、炭酸カルシウムを取り除き、残った繊維構造に透明なアクリル樹脂を染み込ませたそうです。

 

たんぱく質が取り除かれた状態では白い繊維構造だったものが、樹脂を染み込ませたら、繊維構造が補強されて全体が透明になり、透き通った殻になりました。それが写真右側のもの。カニの殻の繊維構造を使ったプラスチックの殻、というわけです。

 

この技術を応用し、今度は殻を粉砕してから同じ処理をし、粉末を水に混ぜて濾過するという工程を経て、白い紙のようなシートをつくりました。厚みは0.1~0.2ミリ。このシートに同じく透明アクリル樹脂を浸透させると、やはりシートは透明になりました。

 

このシート、殻の繊維構造がその芯になっていることによって、弾力性が生まれたそうです。そしてこんな感じに曲がるんですね。

カニ樹脂

 

このカニの殻から生まれた新しい樹脂、変形が自在であるだけではなく、キチンの繊維構造によって、通常のプラスチックに比べて熱による変形量が約10分の1だそうです。熱で伸び縮みはせず、かつ自在に曲がる。この特性が、実は大変に画期的なものなのです。

 

例えば太陽光発電パネルなどの表面には現在ガラスが使われています。ガラスは伸縮はしませんが、変形に弱く、すぐに割れてしまいます。一方比較的変形に強いプラスチックは、温度による伸縮が大きく、パネル表面や精密機器類には使いにくかった。それぞれに一長一短があるのですね。

 

今回のカニ樹脂、その両方のいいところを併せもっています。この活用法として、曲面を持つ太陽電池、あるいは自在に曲がるディスプレイなどが考えられ、これからの新しい精密機器の可能性を大きく拓く可能性を秘めているとか。凄いです!

 

カニの殻とは、これからのシーズンに大量に生じるもの。もちろん、人間が食料にした残渣ですね。肥料とか、健康食品の原料としても利用はされているようですが、それはごく一部。多くは焼却処分されてしまっています。

 

今回のカニ樹脂、その処分される運命のカニの殻を使って、これからの精密機器に使える新しい樹脂として生まれ変わらせたということで、エコでありながら技術革新である、というところが素晴らしいと思います。

 

そのうち製品として実現しそうな「柔らかいディスプレイ」が、実はあの硬いカニの甲羅を使ってつくられるなんて、何だかとても不思議ですし、だからこそ、とても面白いですね。「自然がお手本」という、まさに好例だと感じた次第です。



熊野街道にそって

 

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ご愛読、ありがとうございます。

 

今日は、泉南市での建替の現場に、地盤調査の立会に行ってきました。紀州街道沿いの敷地ということで、周囲には写真のような古い民家がいくつも建ち並んでいます。

 

それもそのはず。紀州街道とは、古くは熊野街道と呼ばれて熊野詣(もうで)の一行で大いに賑わった道なのですね。そしてこの辺りは、「信達宿(しんだちじゅく)」と呼ばれた宿場町だった場所。

 

1000年近くも前から熊野詣で賑わっていたところへ、江戸時代に参勤交代制が確立され、紀伊の殿様が通る街道が整備されて、さらに発展したところなのだそうです。立派な家々が多いのも頷けます。家と言うより、元は旅籠だった建物も多いのでしょうね。

 

そして、この辺りの民家の建物には、少し特徴があります。上の写真にもそれが写っているのですが、おわかりいただけますでしょうか?

 

街道に面しては入母屋屋根の妻側(側面)が面し、いわゆる「妻入り」の形ですが、その妻側の下にもう一段低い屋根があり、その屋根の形が横に直角に飛び出していますね。

 

このようなかたちを「角屋造り(つのやづくり)」というそうです。屋根の形は当然間取りから決まってくるわけですが、このかたちは農家の間取りから発展した町家の間取りを表しているとのこと。

 

信達宿は、半農半商で営まれていた宿場町だったそうで、農家では米の他に綿作が盛んでした。まさにこのことと、角屋造りという民家の形は、リンクしているのですね。とても興味深いです。

 

そういうことを事前に少し予習してから今日は現地に臨んだので、さらに深みのある街並みウォッチングが出来て、とても楽しい時間だったのです。

 

もちろん、本来の業務である地盤調査の立会もしっかりやってきましたよ!結果は数日後に出ますが、あまり悪い地盤ではない感じでしたので、少しほっとした、というところでした。

 

この信達宿、ほかにも旧本陣の「角谷家」が時々一般公開されていたり、「信達宿の野田藤」という藤の名所もあったりします。

 

行くのが楽しみであると同時に、そんな素晴らしい家並みに「木想家」が仲間入りさせていただくのですから、いい加減なことはできません。その重圧も心地よく感じつつ、いい家づくりを進めていこうと、今日は思いを新たにした次第です。

 

 

※以下は、今日撮った「妻壁のてっぺんの装飾窓」コレクションです。これもとても美しく、興味深いものでした。

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立てて置く

 

立てて置く

 

ご愛読、ありがとうございます。

 

車の世界と同様に、自転車の世界というのも、かなり奥深いもののようです。ロードレーサータイプ、あるいはマウンテンバイクなどには、凄いスペックと価格のものがありますね。

 

今までに何回か、そのような素晴らしい自転車を所有しておられる方の家をつくらせていただきましたが、やはりとても大切にされていますから、そういう場合「戸外に置いておくなんて問題外」なのです。屋内設置が大前提です。

 

それで、その専用の土間をつくったり、壁に引っ掛ける方法でディスプレイしたり、色々と方法を試してきました。今回は、そんな家づくりにも役立ちそうな、新しい方式をサポートする機器が出た、というお話です。

 

画像がそれですが、見ての通り、自転車を立てて置いています。なるほど、これは今まであるようでなかった、新しい方式ですね。これによって、ずいぶん省スペースが図れますし、ディスプレイとしてもなかなかカッコいい感じです。

 

では、何故今までこのような方式が普及していなかったのか。それは、しっかりと、かつ簡単な方法で立てた自転車を固定することができていなかったから。今までにも立てる方式はあるにはあったのですが、主に前輪を挟みつけるタイプで、固定できるものとできないものがあったり、はずすのが面倒だったりしたようですね。

 

この新しい装置、名前を「クランクストッパースタンド(CrankStopperStand)」といいます。その「クランクストッパー機構」というのが、今までになかったものです。

 

クランクというのは、ペダルの軸の部分。自転車を漕ぐ時に、脚の運動を回転運動として伝える大切なパーツです。このクランクは、前に回すと車輪に動力が伝わりますが、後ろ側(逆回転側)には自由に回転しますね。このクランクストッパー機構はそれをうまく利用しているんです。

 

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このように、自転車を立ててタイヤをレールに嵌めたら、クランクを逆回転させ、ストッパーのところまで引き寄せて固定します。そうしてしまえば、タイヤが溝に固定されているのでクランクもそれ以上動くことはありません。自転車のパーツの中で一番人間の体重を受け、丈夫につくられているクランクで留めることで、充分な強度で自転車を固定することができるというわけです。そして、自転車自体にも余計な負荷をかけることがない。

 

なるほど。簡単なことですが、まさに画期的ですね。形はとてもシンプルであっても、形と言うよりその仕組みが上手にデザインされ、まさに「用の美」を表したものだと思います。

 

出来てしまえばなんということはなくても、それがなかなか思いつかない。その「発想のあと一歩」が大きく結果を左右する。画期的なものとは、往々にしてそういうもののようです。



環境危機時計

 

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ご愛読、ありがとうございます。

 

画像は、毎年一回、旭硝子財団が発表している「環境危機時計」というものです。

 

これは何を表しているかというと、「地球環境の悪化に伴う人類存続の危機感」です。それぞれの時間帯に、不安の程度が書かれていますね。実はとても恐い時計なんです。

 

今年もこの環境危機時計の時刻が発表されました。今年は9時1分。画像は昨年の時刻で、9時19分です。ということで、今年は昨年よりも18分時計が戻りました。

 

2008年は9時33分、2009年が9時22分、2010年が9時19分ということで、3年連続で時刻が戻り、危機感が弱まったと言えます。しかも、この3年のうちで一番大きく時計が戻っていますね。

 

これは、先進諸国で省エネや再生可能エネルギー政策がかなり急速にすすめられている、そのことへの期待感の現れではないか、と同財団はコメントしています。

 

しかし、図の通り、依然として状況は「極めて不安」というレベルにあるのですね。まあ、今の地球環境の状態を見れば、ある程度納得できる「時刻」ではないかと思いますが。

 

ただ実際のところは、地球上の場所によって、あるいはその国の有り様によって、環境危機の度合いは違っていますから、このような「ひとつの時計」では、わからない部分も多いはずです。

 

しかしそれでも、このような「時刻への比喩」で話題性を高め、警鐘を鳴らす意味合いを広く伝えようとすることには、とても意義を感じます。

 

この時計がもう進む事のないようにしたいものですが、人類が70億人を超えてさらに増えようとする今、それには大変な努力が必要となるのでしょうね。

 

この時計の時刻が戻ったから、単にそれでOKではない。本当はそれぞれの人がこのような「時計」を自分の中にもち、持続可能な社会というものを意識して行動することが大事なんだろうな。そしてその総和としてこの環境危機時計が戻っていく時、人類は危機を脱する方向へ進んでいることになるんだろうな。

 

私はこの時計を見て、そんなことを思いました。






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