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写真のビル、皆さんはご覧になったことがおありでしょうか。その重厚でかつエレガントな外観、素晴らしく美しい階段をもつ内部。このビルは、神戸の旧居留地に建つ「商船三井ビルディング」です。
この商船三井ビルが建てられたのは1922年。大正11年です。築90年を数える歴史的建築物で、まさに「旧居留地の顔」と言える建物なんですよ。今は内部も家具売り場やギャラリーになっていて、気軽にその空間を楽しむことができます。私も行くたびに、その空間を堪能しています。
設計者は、当時関西を代表すると言えるほどの著名な建築家であった渡辺節。同じく関西で非常に有名な建築家、村野藤吾の師匠にあたる方ですね。
このような歴史的建築物で、角の部分に丸みをもたせ、さらにその部分が建物の正面、顔になるというのは、とてもユニークなものなのですが、そこが名手・渡辺節。とても上手にデザインをまとめてあり、何ともいえない味わいがあります。建築当時は「異彩を放つ」と形容されたそうですから、とても斬新なデザインだったのでしょうね。
このビルは関西・淡路大震災でも大きな被害を受けることなく残ったのですが、神戸港のすぐそばに建っているという事情もあり、地下水の対策などによる維持費が少なからずかかっていたとか。そのため、実は2005年から商船三井の社内で建て替え、取り壊しの検討がなされてきたといいます。
しかし、旧居留地の「顔」とも言えるその価値、他のビルにはないその魅力を何とか残せないか、という声があがり、結論として、継続使用を決めたそうです。しっかりと耐震補強を施した上で。いや、全然知りませんでした。ほっと胸を撫で下ろす、とはこのことです。
このビルはコの字の形の平面をしているのですが、耐震補強工事はそのコの字の中、中庭部分に鉄骨の構造体をつくり、それで既存の構造体を補強するという考え方で、数億円をかけて実施するそうですね。
外から見えない中庭を利用して補強をし、その外観と室内の空間を守ろうというもの。大正期のビルを室内まで残すというのは非常に珍しいことだと言えます。素晴らしい決断ですし、とてもいい案だと思います。
神戸の旧居留地と言えば、歴史的建築物が多く残る、とてもいい雰囲気の街で、観光スポットともなっています。その「顔」と言える建物が今後もそのままの姿で生き続け、街の記憶をさらに次世代へとのこすことができる。
歴史的建築物の保存といっても、その上っ面だけであったり、同じ物をつくりなおしたり、とても「保存」とは言えない不細工なものが多い中、この商船三井ビルがそうならなくて本当によかった。心からそう思うのです。
補強工事は4月着工、年内竣工だそうです。と言っても、工事自体があまり目立たないのかもしれませんね。まあ、それが一番いいわけですが。とにかく、めでたしであります!





